目次3-9 ヘッドハンターを目指す人へ
人材ビジネスに携わる人は全員が肝に銘じるべきことがあります。もちろん、人材ビジネスに
従事していない人たちにとっても、ぜひ読んでほしい話です。これが私たちの人材ビジネスが直面している現実であることを、胸に刻んで人材ビジネスに従事するものは、これからも仕事
をしていくべきであると思うからです。まずは、以下の新聞記事の引用を読んでみてください。
昭和30年10月 朝日新聞記事より
S君(27歳)の妻はこの8月に服毒自殺した。失業中の彼の目の前で。(中略)
むし暑い晩だった。私はその朝、横須賀の駐留軍要員がダメだったという知らせを受け取り、一日中むしゃくしゃしていた。明日もまた早起きして、職安回りをしなければならない。 米びつは空っぽだ。妻がその晩アルバイトに行くことだけが頼みだった。ところが「疲れているから
行かない」と言い出した。一週間前、生みたいという妻を説き伏せて無理に流産させたので、
疲れていることはわかっていたが、思わずかっとなってさんざん殴りつけた。「行って来い」と
力ない妻を玄関に突き飛ばした。結局妻は行かなかった。そして寝る前に私のこれからの就職夫婦の愛情問題まで追及してきた。私は例の愚痴だとは知りながら、「じゃ別れよう」と言ってやった。夫婦になって始めていった言葉だった。翌朝10時頃目が覚めた。猛烈に腹が減って
いた。妻は布団をかぶったまま起きなかった。「お前は俺に飯を食わせないのか」と怒鳴っても反応がない。私は家主から米を借りてとぎはじめた。すると妻が私を呼んだ。しぶしぶ部屋に戻ると妻はもう一度私の名を呼び、小さな声で「さよなら」と言った。そばに小さなビンが転がっていた。青酸カリだ。胸がドキンと波打った。「バカ!吐け、吐くんだ!」こう叫ぶと私は妻の口に指を突っ込んだり、背中をたたいたり、もう無我夢中だった。だが、医者にかけつける車の中で、私のクビにしがみついていた妻の両腕がガックリと弱った。妻は、私の胸に顔を埋めたまま息を引き取った。
この話を読んで、皆さんはどう思ったでしょうか。時代背景は今と違います。この時代は失業
すること、イコール食べていけないこと、つまり死ぬことであったといいます。現代は、失業しても食べていけないことはないかもしれません。まして死ぬこともないのでしょう。しかしことの
本質は、今も昔もかわりがないはずではないでしょうか。人材ビジネスに従事する者は、お金儲けのためにやってはいけないのです。人助けをしたい者だけが取り組むべき仕事であると
思います。私はこの教訓を、ただのキレイゴトとは思いたくありません。
現在のヘッドハンティング業界の現状を見ると、とても拝金主義になっている側面が強く、また本来、個人情報を扱っているということから信頼性、信用性が第一であるはずですが、この
あたりの関係がビジネスの現場に少し足りない気もします。人を採用する企業、人探しを請け負うヘッドハンティング会社、実際転職をするビジネス人の間に、信頼関係が足りない状態は、すべての人を不幸にします。おそらくこのあたりの信頼性を高めることができるとしたら、それはヘッドハンターの個人的な資質に頼るところが大きいかもしれません。
2者の橋渡しをするのですから、その案内人たるヘッドハンターが、「信頼されるに足る人」で
ないとすべてのバランスが悪くなります。 「信頼されるに足る人」とはいっても、「ただのいい人」というだけでは、自分の人生の大切な判断をする際にお付き合いはできないでしょう。ヘッド
ハンターを選ぶ際、以下の要素があることが、最低条件です。
*信頼して仕事を任せられるだけの知性、見識、判断力を備えていること
*ビジネスとはいえ、できる限りの誠意を見せてくれているか
*ビジネス社会や採用企業対して、影響力を発揮しているか
皆さんによい出会いがあることを祈っています。
