目次2-15 1)慰留されたら
ヘッドハンターの仕事は、雇用契約書に署名をもらった時点で終わりではない。確かに、雇用契約書に署名をもらった時点で肩の荷はおりるが、そのビジネスマンが現職である以上、現在働いている会社から円満退職をしてもらわなければ、仕事はスムースにはいかないのだ。
さて、現職のビジネスマン、特に一定のポストにいるようなビジネスマンが辞めることを会社に表明した際、10人中8人は、会社に慰留されると覚悟したほうがいい。特に優秀なビジネスマンが転職する際は、会社にとって大きな痛手となるため、強い引きとめにあう可能性がある。このことをヘッドハンターは、十分に認識していなければならない。実際、慰留にもいくつかのパターンがある。
1)その人物を失うことが大きな損失となるため、どんな手を取っても引きとめたい場合
2)辞められるのは非常に困るが、辞めたいという本人の意向にも耳を傾けている場合
3)辞めるのは当面困るが、対策も取れないこともないため、一応慰留をしてみるという場合
1)のような場合は滅多にないといってもいい。ビジネスマンの方は当然自分の会社に対する貢献度を信じているため、要職にいる人ほど、会社から強く慰留されることを予測し、実際慰留されたときに、その慰留の強さを見誤るケースが多い。ほとんどのケースは、2)か3)である。つまり、慰留するのは目先のわずらわしさが原因であり、辞める本人の意志が固いということが理解できれば、後は退社までの引継ぎの話になる。
ヘッドハンターは、このあたりのビジネスマンと彼の勤める会社の間の出来事に、あまり頭を突っ込むべきではない。ビジネスマンの方のプライドや尊厳を傷つけるような対応をすることは本意ではないだろうし、誰しも円満退職を心がけるべきだが、そうできない事情を抱えた人も中にはいるのである。
ヘッドハンターが気をつけるべきことは、雇用契約書に署名してもらう前に、ビジネスマン本人に慰留される可能性があることをしっかりと伝え、その慰留に乗ることが本人にとって中長期的に得策でないことを、理屈で理解してもらうことが大切である。こうした事前の話し合いがしっかりとできていれば、やめようと腹の決まった会社から慰留されたくらいで、契約を破棄しようという人はまずいない。
若いビジネスマンの転職を担当しているヘッドハンターの場合は、中には契約書の重みを理解できないビジネスマンに翻弄された経験を持つ人もいるだろうが、一定のレベル以上のビジネスマンであれば、このあたりのトラブルは少ない。
ヘッドハンターにとって、自分が担当したビジネスマンの方が現在勤める会社から退職するまでをしっかりとフォローすることは、とても重要である。
